ガラパゴス化した宇部ラーメンの歴史

 現在の山口県のラーメンは、ニューウェーブ系のラーメンの出現によって混沌としているが、元々の地元に根ざしたラーメンは、東の「醤油ラーメン」、西の「豚骨ラーメン」とに大きく二分される。県中部の防府市の椿峠を境にそれは顕著に見てとれる。西の豚骨ラーメンと言ってもその多くは、あっさりしたスープに細麺の「博多系豚骨ラーメン」だ。だが、ここ宇部市においては、匂いが強く濃厚なスープに中太麺の「久留米系の豚骨ラーメン」が主流である。そのルーツは、大阪から来た一人の男性によって始まる。

  いまは新天町にある「大阪屋」。現在は三代目にあたるが、初代はその祖父。若かりし頃に大阪に住んでいた初代は「西日本で栄えているのは福岡だ。福岡で商売をしよう!」と、リアカーを引いて海沿いに旅を進めた。その途中、石炭で栄えていた宇部の街に着いた時に「活気のある街だ、ここで商売をしよう。」と、宇部を拠点に商売を始めることに決めた。当初は宇部中央バス停留所の辺りに「大阪屋」の屋号で食堂を始めた。繁盛していたが、商才のあった初代は、食堂としての未来に不安を抱き、当時、炭鉱やゴム産業で賑わっていた久留米へラーメン作りの修業に行った。そこでの経験をもとに宇部へ戻り、またリアカーを引き、屋台での商売から始め、最初の店舗を中央町に構えた。 こうして、久留米の豚骨ラーメンの味が広まり、県内においては唯一の「久留米系豚骨ラーメン」の味が、ここ宇部市で誕生し、六〇年の歳月とともに、独自に進化を始めた。県内の他地域とは違い、ガラパゴス化した宇部ラーメンの歴史は、宇部市の発展と非常によく似ているように私たちは思う。宇部市は、県内のどの街とも違い、宇部市だけで独自に発展してきた。それを宇部モンロー主義という人もいるが、宇部ラーメンは、その象徴的な存在なのかもしれない。 塩気と脂気の効いた独特の匂いを発する宇部ラーメン。この独特の匂いとうまさを私たちは「くさうま」と称し、その味を守り続けているお店をここに紹介する。

  私たちは、この宇部ラーメンが、宇部を代表する文化の一つとして、次代につなげていけるよう活動をしていきます。あなたが、お好みの一杯に巡り合えることを祈念します。

宇部ラーメンのお店

企画・協力

●企画
くさうま宣隊宇部ラーメンジャー
(宇部市シティセールスパートナー)
●協力
宇部未来会議